不器用な彼が隠した2文字
『いや、紫乃ちゃんに、有紗が朝比奈先輩のところに行ったって聞いて…
大丈夫だった?』
心配してくれたのかな。
この前会った時、変な空気だったから。
「うん、大丈夫、ありがとう」
『そっか、良かった。
うん、じゃあそれだけだから…』
「うん、また明日ね」
電話を切って、もう一度朝比奈先輩の家の方を振り返る。
「……わかんないよ、先輩…」
暗くなり始めた空を見上げながら、朝比奈先輩の家にくるりと背を向けた。