不器用な彼が隠した2文字
「…やっぱり、ないなぁ」
あれからしばらくスマホのライトを頼りに探したけど、ネックレスは見つからない。
もう暗くなったし、さすがに帰ろう。
走って行った朝比奈先輩の背中。
振り返らなかった、その背中。
見つからないネックレス。
それが答えなのかもしれないけど。
「…帰ろう」
ゆっくり立ち上がると、思っていたよりも汚れていた手に気付いた。
さぁっと吹いた涼しい風に、きゅっと目を閉じる。
泣きそうな瞳を開けて、空を見た。
曇った空のせいで、星はひとつも見えなかった。