フテキな片想い
「あっ……」と声に出した時には遅く、真央は「単純な奴だな」と鼻で笑う。
あぁ、シャンプー使われて怒ってたんだった……スイーツの差し入れで、コロッと忘れるなんて、私は何てバカなんだ。
「まぁ、今日のところは許してあげようかな?真央も反省してるみたいだし」
「わざとらしい」
コホンと咳払いをし、誤魔化した。
真央がスイーツをゲットしたコンビニを過ぎ、タコのすべり台がある小さな公園が見えてくると、その先が商店街になっている。
商店街を左に曲がり、進んだ先に駅がある。
通勤時間帯の今は駅に向かう会社員や学生が多くなって来た。
「でもさ、考えてみるといいよね」
「何が?」
「同じシャンプーとか、同じ柔軟剤の香りって。家族って感じがする」
「……家族ね」
真央を興味がなさそうに繰り返した。そのポーカーフェイスからは、リアルな感情は読めない。
「弟よ!」
私、真央と肩を組もうと、背伸びをして、腕を伸ばした。