フテキな片想い
「アイツも忙しいんだよ。友達んち行ってる時もあるし、バイト始めたし……また今度、気が向いたら」
気が向くことはないかもしれないがと、心の中でそう呟きながら、再び視線を机上に戻す。
「別に獲って食べようとしてる訳じゃないよ。興味があるんだ。真央が好きな女の子に」
「星夜、あのなぁ____」
違うって!声を上げようとした所で、チャイムが鳴り、同時に担任が日誌を片手に前方の扉から入って来た。
「席つけー」と初老の担任は教卓の前に立ち、トントンと合図に日誌の端を、卓上に二回叩き付けた。
はぁと嘆息を漏らし、教卓に向かって姿勢を正す。
ちらりと後ろの星夜を盗み見ると、含み笑いをしていた。
コイツ……
お兄と唯一、違う点を述べるとしたら、その鋭い勘の良さだろうか。
心の奥底に沈めていた感情を、いとも簡単に引き上げてしまうなんて___侮れない奴だ。
とりあえず、暫く星夜を家に泊めるのはよそうと、固く決心した。