フテキな片想い
今、この瞬間に言えたなら、イライラは解消されるのだろうか?
否。そんなの有り得ない。
唇を噛みしめ、グッと拳を握りしめる。
井岡が美雨の横に立ち、マイクを差し出す。
「では、中瀬美雨さん。返事をお願いします」
MCがそう言うと、辺りは沈黙に包まれた。観客が今では、皆、後ろを振り返り、マイクを向けられた美雨に注目している。変に鼓動が速くなる。自分が告白してるワケじゃねぇのに。
美雨が戸惑いながら、こちらにチラリと視線を寄越した。
美雨と目が合った。何か言いたそうに、口がパクパクと動いているが、肝心の声が出ていない。
俺がここにいるの、気付いてた?
そうだよな。マイク持ってちょいちょい観客の中を走ってりゃ、嫌でも気付くよな。
嫌でも。
そんなに辛そうな顔で俺を見るなよ。もしかして、俺が告ったの気にしてる?
もう、蛍先輩と付き合っちゃえば、いいんじゃね?手取り足取り教えてくれるらしーし。