フテキな片想い
彼はニヤニヤしながら、私の顔を覗き込む。
「自己紹介、まだだったのは謝るよ。ごめんね。俺の名前は遠野蛍(とおのほたる)、坂下高の二年」
坂下高校?真央と同じ学校だ。
彼をじっと見つめていると、「どうかした?」と訊ねられた。
「いや、あの、お店に来る時は、いつも私服なので、まさか高校生とは思いませんでした」
彼はいつも私服でお店に現れた。
顔立ちも服のセンスも、少し大人っぽかったから、大学生位なのかと勝手に思っていた。
それに……
「坂下高校に、私の弟も通っているので……」
「えっ?そうなの?何て名前って訊いた所で、男ばっかり、千人近くいるから、解んないだろうな」
車が往来する通りの隅で、彼はアハハと笑い声を上げる。
真央と同じ学校の先輩と知り、ちょっとだけ警戒心が薄れた私は、つられて笑ってしまった。