フテキな片想い
「ピンクのボトルのバラのパッケージのやつ!マジックで「使うな!」って書いてあったでしょ?限定品でもう売ってないから、大切に使ってたのに」
「シャンプーなんてどれも同じだろ?つうか、その辺にあるの適当に使ったから、どれだったかよく覚えてねぇし」
真央は不機嫌を露にしながら、眉間に皺を寄せ、立ち上がり、「着替えるから」としっしっと私を追い払うポーズをした。
ムカつく~。
ほっぺたを膨らませて、反抗すると、わざと足音を立てて、真央の部屋を後にした。
「ごめんね、美雨ちゃん。週末には、専門業者に来て貰うから、それまで辛抱してね」
食卓に着くと、焼けたトーストを私の前に置き、玲央さんが申し訳なさそうな顔をする。
「シャンプーごときで、ビービー言ってるんじゃないの。使われるのがそんなに嫌なら、自分で管理しなさい。使い終わったら、自分の部屋に持っていくとか」
私の隣に座るママは、そんなクールな意見をしながら、新聞を読んでいる。
玲央さんからブラックコーヒーを受け取ると、「ありがと」とその時だけ、嬉しそうに微笑んだ。
「……今夜からはそうする」
そんな恋する乙女のような母親の表情を見て、私は溜息を吐く。