フテキな片想い
「おはよう」
電車の戸が開くと、ホームからパラパラと乗客が乗り込んで来た。
つばさんはよっと右手を小さく挙げ、私の前に立つと、空いている隣の席に腰を下ろした。
つばさんの私服を見るのは、今日が初めてで、真央が言っていた通り、遠目で見たら、男の子だと思う位、ボーイッシュだった。
薄手のモッズコートに、カモフラージュ柄のスキニーパンツ。
足元にはごつめのブーツ。
ユニセックスなんだろうけど、つばさんが着ると、イケメンモデル風になる。
「おはよう」
私はぎこちなく、挨拶を返す。敬語禁止令が発動したので、タメ語に切り替え中なのだ。
まだ慣れないせいか、出てくる言葉がぎこちなくなってしまう。
「電車に乗って、つばさんとお出掛けなんて、ちょっとドキドキしちゃう」
「そういえば、放課後、いつも学校の周辺で遊んでたから、きちんとどこかに出掛けるのは初めてだね」