フテキな片想い
電車が駅を離れた所で、会話がスタートする。
「でも、楽しみにしてた」と言って微笑むつばさんの表情に、「私も!」と答える。
少し緊張が解けてきた気がした。
「お昼、何食べようかなぁ?」
「何?もう、昼飯の心配?美雨って、体型に似合わず、食いしん坊なんだ」
ププッとモッズコートの袖口で口元を押えながら、つばさんは背もたれに寄り掛かった。
「食いしん坊って言葉、久しぶりに聞いた」
「そういえば、久しぶりに言った」
お互い顔を見合わせて笑う。
何が可笑しいのか解らないけれど、ツボに嵌り、暫くの間笑いあった。
向かいの席に座り、文庫本を読んでいた大学生位の男の人が、迷惑そうな顔でこちらを見、ゴホンと咳をした。
私はぺこりと頭を下げ、背筋を伸ばして、座り直した。
「そういえば、何ですか?私に相談って」
つばさんの耳元でこっそりと訊ねた。
そう、つばさんから私に個人的な相談があるから二人きりでと念を押されていたのだ。