閉じたまぶたの裏側で
諸刃の剣
お昼過ぎに應汰の家のそばのファミレスで食事をした後、自宅に戻った。
シャワーを浴びて、コーヒーを飲みながらぼんやりと窓の外を眺めた。
なんだか思ってもみない展開になったな。
まさか應汰に迫られるとは。
明日デートしようと應汰は言ったけど、應汰とのデートってどんな感じなんだろう?
そういえば、ここ何年かはデートらしいデートなんてした事なかった。
勲とは真っ昼間から出歩いたりできるような関係ではない。
夜だって、食事ですら人目につかないような所を選んでいたんだから。
ほとんどが私の部屋で過ごすだけ。
ほんの僅かなその時間でさえ、ほとんどがベッドで抱き合うだけだった。
勲はきっと、七海に求められないような事を私に求めているんだと思う。
そのくせ、私が他の人と会う事に嫉妬なんかして、身勝手にもほどがある。
いつまでも勲の言いなりになんかならない。
この先どんなに勲と一緒にいたところで、私には求めても手に入らない物が多すぎる。
もしかして…。
バッグの中からスマホを取り出してため息をついた。
──やっぱり。
夕べ、マナーモードにしていたから気付かなかったけれど、應汰と一緒にいる間にも勲からの着信が何件も入っていた。
トークメッセージの通知に気付き、画面を開いた。
【どこにいるんだ?まだ帰ってないのか?】
………うるさいな。
私がどこで誰と何してようが関係ないよ。
変な束縛とか嫉妬とかしないで。
私の名前を男の名前で登録しているくせに。