閉じたまぶたの裏側で
どんなに好きでも、どうにもならない。

何度となく秘密の逢瀬を重ねても、募るのは寂しさと虚しさばかり。

勲が私を好きだと言えば言うほど、心は虚しさに蝕まれて行くというのに。


ベッドの上で激しく揺さぶられながら、あとからあとから涙が溢れた。

繋がっていられるのは体だけ。

私たちは互いを求めるほどに罪を重ねる。

何度果てても満たされない想いは、行く宛もなく宙をさまよっている。



「芙佳…ごめん…。」

勲は泣きじゃくる私を抱きしめた。

こんな関係、望んでいない。

お互いの事だけを想って抱き合えたあの頃とは違う。

本当に私が好きなら、もうこの手から解放して欲しいのに。

こんなふうに優しく抱きしめられたら、私は愚かにも勘違いしてしまう。

勲は困り果てた顔で、私を抱きしめながら優しく髪を撫でた。

「芙佳、ごめん…。もう泣かないで…。」

勲の腕の中で涙はとどまる事なく流れ続ける。

ただ、胸が痛い。


わかってる。

もう終わりにしなくちゃ。

こんな関係、許されるわけがない。

だけど、今この時だけはすべて忘れて、私だけの勲でいて欲しい。


どうしようもないほど、勲が好きだ。



私、矛盾してる。





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