閉じたまぶたの裏側で
應汰は私が泣き止むまでずっと、抱きしめて優しく頭を撫でてくれた。

それからまた手を繋いで車に向かって歩いた。

「無理なんかしなくていい。芙佳は芙佳のままでいいって、俺は思う。」

どうして應汰はいつも、私の欲しい言葉ばかりくれるんだろう。

「うん…ありがとう。」

「どうだ、惚れただろ?抱いてやろうか?」

應汰はおどけてニヤッと笑った。

「バカ…すぐ調子に乗るんだから…。」

「お礼のチューは?」

顔を近付けられ、思わずギュッと目を閉じた。

「やーめた。」

應汰は顔を離して、私の頭をポンポンと軽く叩いた。

「俺からじゃなくて、芙佳からしてくれるの待ってる。」

それって…私が應汰を好きになるまで待ってるって事なのかな。

應汰って、やっぱりいいやつ。





それからまた少し車を走らせ、プラネタリウムに行った。

暗い館内で倒したシートに身を預け、二人並んで夜空を模した天井を見上げた。

偽物の夜空に散りばめられた、偽物の星に見入っていると、應汰が私の手を握った。

偽物の星空の下で行くべき方向を見失い、迷子になってしまいそうな私の心は、温かくて大きな應汰の手に少し安心する。

プラネタリウムの上映が終わって席を立とうとした時、私の耳元で“いつか芙佳と一緒に本物の星空を見に行きたい”と、應汰が優しい声で囁いた。



應汰となら、行くべき方向を見失わずに歩けるのかな?


その温かくて大きな手で、ずっと私の手を引いて歩いてくれる?










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