閉じたまぶたの裏側で
嫉妬する資格なんかない
デートした翌日から、應汰は仕事が終わると毎日のように私を食事に誘うようになった。
二人で軽くお酒を飲みながら食事をして、いい気分になってカラオケに行ったりもした。
應汰は毎日飽きもせず、俺の嫁になれと言う。
應汰曰く、これは洗脳なんだそうだ。
毎日一緒に食事をして、俺の嫁になれと言い続ける事で、私をその気にさせると應汰は言う。
だけど多分、應汰の目的はそれだけじゃなくて私と勲をもう会わせないようにしているんだと思う。
会って顔を見ればきっと、好きな気持ちが勝ってすべてを許してしまうから。
應汰には、その人が同じ部署の上司の橋本主任だとは言っていない。
だから私が毎日、会社で彼と顔を合わせているのを、應汰は知らない。
私は毎日できるだけ勲とは目を合わせないようにして、仕事に必要な事以外は話さない。
ただ時々、仕事中に視線を感じてふと顔を上げると、勲が何か言いたげな顔をして私を見ている事がある。
あれから勲とは会社以外では会っていない。
勲が突然家に来る事もないし、電話もトークメッセージもメールもない。
すべて私が望んだ事なのに、心のどこかでまだ勲への淡い期待が捨てきれずにいる。
勲に奥さんがいても一緒にいられるだけで幸せだったとは決して言えない。
それが勲にとって望まない結婚であったとしても、七海と結婚したという事実は変えられないし、お互いにいくら好きでも、私たちの関係が不倫である事には違いない。
不倫は道徳に反する事。
私たちは、人として守るべきルールにそむいている。