閉じたまぶたの裏側で
「あ、ごめん。そんなにくっつかれると料理しづらいから、ちょっと離れてくれる?」

「いてーよ…。」

ちょっとかわいそうな事しちゃったかな。

だってそんなにくっつかれると、また應汰が暴走しちゃうんじゃないかって思ったんだもん。

「應汰、お皿取って。」

應汰は食器棚から取り出したお皿を2枚調理台に並べて、私の耳元でくやしそうに呟く。

「芙佳め…後で覚えてろよ。」

「なんだっけ?もう忘れた。」

一体何するつもりなんだ?!


「お待たせ、できたよ。」

出来上がったパスタをお皿に盛り付け、フライパンをコンロの上に置くと同時に、應汰が後ろから私をそっと抱きしめた。

「…應汰?」

「料理、終わったからいいだろ。」

「えっ…。」

突然その手に捕らえられ、逃げ場を失った私の心臓が急激に大きな音をたてた。

應汰は私を抱きしめて、髪に頬をすり寄せる。

「芙佳とこういうの…ずっと夢だった。」

「こういうの…?」

「芙佳が俺のために料理作ってくれてさ…俺はキッチンで芙佳を抱きしめてキスするの。」

いつもより甘い應汰の声が心地よく耳に響く。

「キス…していい?」

改めてしていいかと尋ねられると無性に恥ずかしい気がした。

應汰とキスするのは初めてじゃない。

でもデートした時に應汰は、私が應汰を好きになるまで待つと言った。


私は應汰の事が好き?


それともまだ…。




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