閉じたまぶたの裏側で
誰にも聞いてもらえない不毛な恋の終わりを、自分だけの胸の内に秘めておくのは苦しい。

情けない顔を見られたくなくて、應汰の胸に深くうずめて隠した。

「夕べ…終わらせたんだ。」

「うん…。」

「もう二度と来ないでって言った。」

「そうか…。」

「でもホントは…すごく…好きだった…。」

「……うん…。」

應汰は優しく頭を撫でて、いつまでも泣いている私をずっと抱きしめてくれた。

その手は大きくて、優しくて温かかった。


ごめんね、應汰。


私はやっぱり、あなたの腕の中で、勲の事ばかり考えてる。

代わりでもいいなんて、ホントは思ってないよね。

私は應汰の優しさに甘えて、傷付けてる。


私の恋の返り血を身体中に浴びて、傷付いた心から自らの血を流して、それでも尚、あなたは私を抱きしめてくれるんだね。



随分時間が経って私の涙がようやく落ち着いた頃、應汰が私の手を取り立ち上がった。

「なぁ芙佳、酒でも飲むか。」

「お酒…?」

「ヤケ酒くらいは付き合ってやんないとな。」

應汰がニヤリと笑った。

「飲みに行くか?それとも家飲み?」

「酔ってもいいように家飲みにしよう。それからケーキもたこ焼きもポテチも食べたい。」

「よし、任せとけ!今日はなんでも好きな物奢ってやる!!買い出し行こう!」

「うん!」

これは應汰なりに慰めてくれてるのか、それとも應汰自身が飲まなきゃやってられなかったのかはわからない。

だけど應汰の胸で思いきり泣いて、ほんの少し心が軽くなったような気がした。





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