閉じたまぶたの裏側で
應汰は約束通り、たくさんのお酒とおつまみ、それからケーキもたこ焼きもポテチも買ってくれた。

私の部屋で始めた飲み会を、應汰は“失恋パーティー”と言った。

なくした恋はもう戻らない。

私は勲とは幸せにはなれなかったけど、お互いにこれ以上不幸せにならないように、この恋に終止符を打った事は、後悔していない。

そう思えたのは、應汰のおかげかも知れない。



夕方から飲み始め、かなりお酒が入って、夜には二人とも相当酔っていた。

どうでもいい話をして笑い、笑ってまたお酒を飲んだ。

買ってきたお酒がもうなくなる頃、私は應汰の肩に体の重みを預けながら、目を閉じて酔った頭でぼんやりと考えていた。

「ねぇ應汰…。」

「ん?」

「私ね…いつも、帰らないでって言えなかったんだ。」

「うん…。」

「帰らないでって言いたいのに…いつも、帰ってって言ってた。」

「そうか…。」

もう枯れたかと思ったのに、涙がまた溢れて頬を伝った。

「普通の恋人同士だった頃は言えた事が、言えなくなっちゃったんだ。」

「……言いたいのか?帰らないで、って。」

「うん…。」

「あの人に言えなかった代わりに言うの?…俺に。」

「……やっぱりやめとく。」


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