閉じたまぶたの裏側で
どうせ実のない関係なら、落ち込んでる友達を元気づける方がいいに決まってる。

いい加減、勲の嘘も聞き飽きた。

金曜の夜なんてドタキャンされる可能性だってあるし、たまにはこっちから断ってやろう。

私に断られたって、家に帰れば綺麗な奥さんが待っているんだもの。

勲にとっては痛くもかゆくもないはずだ。




昼休みが終わる直前。

スマホのトークアプリの画面を開いた。

勲は自分の席でパソコンに向かっている。

周りに誰もいない事を確かめてメッセージを送った。


【金曜日は友達と約束があるから来ないで。】


勲はトーク通知音に気付いてスマホをポケットから取り出した。

トーク画面を開いてメッセージを確認した勲は面白くなさそうに顔をしかめている。

すぐに勲からの短いメッセージが届いた。


【男と会うのか?】


私はあなたのものじゃないの。

そしてあなたも、私のものじゃない。

一緒にいる時でさえあなたを私に縛り付ける事はできない。

だから私は少しだけ、あなたを惑わせたい。


【あなたには関係ない。】


関係ない。

自分で言っておいて余計に虚しさが増した。

恋人でも夫婦でもないのに、嫉妬も独占欲もないよね。

小娘じゃあるまいし、こんな駆け引きみたいな事したって、なんの意味もないのに。

ホントに馬鹿げてる。






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