閉じたまぶたの裏側で
「とりあえず、ちゃんと話そう。お父さん、お母さん、今のは一旦忘れて。」

「いや、忘れなくていい。」

「應汰は黙ってて!!」

「ハイ…。」

應汰はほっとくと何を言い出すかわからない。

「お母さん、夕方には戻るから、ちょっと抜けてもいいかな。」

「今日は二組だけだし、大丈夫よ。いろいろ話があるんでしょ?芙佳の部屋に泊めてあげたら?」

「お母さん!!」

この母も何を言い出すかわからない。

父は卒倒しそうだ。

「とりあえず…今夜はここに泊まるつもりで来たんだけど。部屋、空いてるかな。」

「空いてるけど…お父さん、大丈夫?」

父はやっと我に返った。

「ああ…一人分くらいならなんとかなる。」

「じゃあお願いします。」


客室に應汰の荷物を運び、落ち着いて話をするためにペンションを出て私の部屋に應汰を連れて行った。

この部屋に両親以外の人が来るのは初めてだ。

コーヒーを入れてテーブルの上に置いた。

「とりあえず…順を追って話して欲しいんだけど…。なんで應汰がここにいるの?」

「最後に会った次の週、芙佳に電話しても繋がらないし会社にも来てないし、おかしいと思って経理部の子に聞いたら、芙佳は会社辞めたって聞いてビックリしてさ…。仕事終わってマンション行ってももう引っ越した後だし…。」


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