おいしい時間 しあわせのカタチ
ジューシーに仕上げるタイミング
別に、念願かなってこの高校に来たわけじゃない。
地元で、かつ自転車で通える圏内で、かつある程度の女子が揃っていて、かつわたしの頭でも入れる公立の学校を探したら、ここしかなかったというだけ。
でも、今となってはここを選んでよかった、と心から思う。
住めば都、とかいうわけではないのだけれど――いや、限られた人数の女子たちと育まれた結束は中学にはなかったもので、それはそれでたのしいのだけれど、それよりも――わたしこと詠子(えいこ)は、どうやら高校進学とともに、運命の人に巡り合ってしまったかも知れないのだ。
去年の暮れのクリスマスはクラスでパーティを開いたけれど、部活だからとあえなく欠席。
初詣は、おそらくそれらしき人のうなじと肩先を拝んだきり。
先月のバレンタインデーもやっぱりわたしの意気地が足りなくて撃沈した。
でもそれでも挫けない。
それに、まだ大丈夫なはず、という根拠の”ある”自信が詠子を励ましていた。
だって彼は誰より硬派で、部活一筋の男の中の男だから、色恋事にうつつを抜かしているはずがないのだもの。