おいしい時間 しあわせのカタチ

 そんなわたしも四月から二年生。

 春休みに突入して、本格的に外部が活動を再開してからはますます会う機会が減ってしまったけれど、どこよりも忙しい部活で頑張っている彼に惚れてしまったのだからその点は諦めるよりない。

 でも、それだけ部活に縛りつけられていれば、妙な性癖に目覚めない限りは、へんな虫がつくこともないだろうと高を括っていた。

 大丈夫だろうと思っていたのだ、今の今まで――。


 なんということだ。


 まさか八津(やつ)くんを狙っているのが自分だけじゃなかったなんて。

 しかも無駄にいい雰囲気だった。

 綿密なリサーチの結果、彼女はいないはずなのに。

 ……愛しい彼の手が、なんのてらいもなくどこぞの女子の頭に載せられるところを見てしまった。

 どこいったんだ、硬派!

 あれじゃあただの優男じゃねぇか。


(いやいや、それはちがう)


 すぐさま、自らの自身への裏切りを打ち消すも、それでなくても女子に潔癖な八津くんが、それも優しい笑顔つきで接触する理由はひとつしかないのではないだろうか。

< 125 / 186 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop