おいしい時間 しあわせのカタチ
「ありがとう。助かりました。あなたも嶋内工業高校の生徒さん?」
「あ、はい。普通科で、四月から二年生になります。あの、こんな大量のじゃがいも、どうするんですか?」
聞いてしまってから、まずは相手の身元について質問すべきだったと気づく。
それだけ唐突なじゃがいものインパクトがでかかった。
「寮生の皆さんと、合宿中の野球部の生徒さんの夕飯に出そうと思って」
「夕飯……? てことは、新しい寮母さんですか、お姉さんが……?」
そんな、まさか。
別に決まりはないのだろうが、あたかも作為的にえらんでいるかのように、生徒を除く若い女という女を徹底的に排除しているこの学校の現状からいって、いきなりこんなぴちぴちの、それも雑誌から抜け出てきたような美人を採用するとは思えない。
寮母さんだからそのへんの基準も甘く見られたのだろうか、と無意識に無遠慮な視線を注いでいると、
「いいえ、ちがいますよ。わたしは今日から二週間限定で配属された、ただの調理係。諸々の細かいことは学校の事務の方が代わりに引き受けてくださるとおっしゃっていました」
「はあ……。じゃあいつもの寮母さんは?」
「さぁ、わたしはただ生徒さんにご飯を出すよう頼まれただけなのでそこまでは。ただ、田舎に行くみたいなことは話していたような気はするけれど……、うーん、お勝手の説明を覚えるだけで手一杯だったの」