おいしい時間 しあわせのカタチ
二人がやってきたいわゆるホームセンターは、平日の午前という時間帯のせいか、手持ち無沙汰な店員が数人と、まばらにお客がいるだけだ。
「えっと、トイレットペーパーはたしか……。最近ここ改装したからわかんなくなっちゃって」
「まずは脚立じゃないんですね」
軽い皮肉を鮮やかにスルーしながら佐希子は進む。
「あらぁ、綺麗なバラ。あっ、見て見て根岸くん、このコスモスすごい。チョコレート色」
ねぇ、と振り返れば、呼ばれたバレンタインデー撲滅推進委員長は冷ややかにバレンタインデー用の特設販売スペースを見つめている。
やれやれ、と佐希子は内心で首を振り、目当てのトイレットペーパーをいくつか、山積みの中から持ち上げた。
レジで清算を済ませ、駐車場へと向かっていると、不意に前方から、
「根岸じゃないか?」