可愛いなんて思ってない!
秦山の家へ行くのは初めてで
場所はなんとなく知っていたけど
初めて見たその家に
私は目を見開く。
「こんな綺麗なマンションに住んでたんだ…。」
シックなデザインで
いかにもデザイナーズマンションと言ったような
オシャレな外見。
ロビーに入ってもやっぱりそこはすごい上品でオシャレ。
「秦山も一軒家かと思ってた。」
「そんな無理やて。俺一人暮らしやのに一軒家はデカすぎるやろ。」
「あぁそっか………は?」
ん?今なんて…?
「え!一人暮らしなの?!」
「せやで。言うたやん去年。」
え、何それ…
そんなの一言も聞いてないんだけど!
「引越したってちゃんと言ったやろ?」
「確かに聞いたけど…
そんなの一人暮らしだなんて思わないよ!」
普通に引越したとか言うから
家族全員で引越したのかと思うじゃん!
「でも、親とか兄弟は?」
「みーんな大阪戻ったで。
俺は大学受験も控えてるから
ここにしよかなーって言ったら」
案外あっさり承諾してくれたで。
なんてサラッと言うもんだから
私も何か落ち着いてきちゃって
そうなんだ、と普通に返す。
(高校生で一人暮らしなんて…本当にいると思ってなかった。)
だって普通に考えて周りにいないし聞いたこともないもん。
でも一人暮らしってことは
家事とかも全部自分でやるってことでしょ?
(それを全部こなしながら受験勉強って…相当大変なんじゃないのかな。)
なんて考えながらエレベーターに乗って
秦山の住んでる階へ到着。
-----ガチャッ
「どーぞお入りくださいまし〜。」
「お、お邪魔します…。」
一人暮らし用というのもあってワンルームだけど
綺麗で設備も整った部屋だった。
ちゃんとベランダまで付いてるし。
「まぁそこらへんのソファでも座っといてー。」
今ご飯入れるなーとキッチンへ向かう秦山の指示に従って
私はソファへ向かい、座った。
テーブルがあって
ちゃんとテレビまで完備してあるなんて
この子の家お金持ちだな
なんて思いながら
静かに部屋を見渡す。
(男子の部屋ってこんな綺麗だっけ…。)
と自分の弟の部屋を思い出して
そんなことないよね、と改めて秦山のしっかり者さを感じる。
「…そんな見んといてや。恥ずかしいやろ、汚いのに。」
「え、全然汚くないよ!」
むしろすごい綺麗だと思った!
と正直に言えば
おおきに、と笑顔で返されて
少しハッとする。
(…何か本当に…落ち着かない…。)
なんて
急に緊張が蘇ってきたり。