可愛いなんて思ってない!
斎藤くんは教室に入ってきてすぐに
騒いでる秦山たちにそう言って
自分の席へと向かう。
…珍しい。
去年はいつも秦山と一緒にいて
楽しそうに話しているのに。
女子が知り合いじゃないとか?
もしくは秦山と何かあった?
それとも気分?たまたま?
なんて考えてしまうほど
予想もしない言葉だったのだ。
「…何やねん斎藤。今日はノリ悪いやん。」
「思ったこと言っただけだけど。」
「……そうかよ。悪かったな。」
なんて
これまた珍しくドライな2人。
でも思えば昨日から
秦山が女子と話してる時
斎藤くん一緒にいなかったよね。
…何か、変な感じ。
「って…斎藤くんおはよう。」
「おはよう。坂田もおはよ。」
「おはよう斎藤くん。」
斎藤くんの席はユカリの後ろ。
本当は
小林、斎藤、坂田、なんだけど
斎藤くんは身長が高いからっていう理由で後ろに。
おかげでユカリと前後で居られるんだけどさ。
「斎藤くん珍しいね、秦山にあんなこと言うなんて。」
「ん?…あぁ、あれね。
だってうるさかったから。」
とストレートに言う斎藤くんに
私は少しクスッと笑った。
斎藤くんは去年からクールで
でも紳士で優しい人だけど
ちゃんと自分の意見とかはっきり言うタイプなんだなぁと思ったら
何か意外で。
「…あと何か少し見苦しいし。」
「ぶっ!!」
どこまでストレートなの!と私が思わず吹き出す。
見苦しいって…それもう悪口に近くない?
(でもあの斎藤くんが言うんだからなぁ…。)
相当鬱陶しいってことなのかな。
よく分からないけど。
「っていうか…斎藤くん何か髪の毛そんな茶色かったっけ?」
と私が尋ねる。
肌も白くてもともと色素薄いなぁとは思ってたけど
より茶色くなった気がするんだけど
光のせいかな?
「あぁ〜…まぁちょっとね。魔法使った?」
「魔法って…バレバレじゃん!」
斎藤くんは頭も良くて真面目。
しかも紳士だから
より一層イメージにないけど
髪の毛染めちゃったんだね、茶髪に。
「斎藤くんって意外とチャラいよね。」
「んーそう?
ハタほどじゃないと思うけどね。」
「うん。中身は全然チャラくないよ?」
見た目だけね、と言えば
そうかな?と自覚がない様子で。
秦山だってあんな性格して
地毛でピアスも開けてないし
割と見なりは真面目。
その相方の斎藤くんは
思った以上にチャラさを感じる。
うん、やっぱり意外。
「あ、そうだ。宿題やった?」
「うん、やったよ。」
「悪いけど見せてくれない?
昨日普通に寝ちゃったんだよね。」
「はははっ、いいよ。」
そう言って私は斎藤くんに
宿題のプリントを渡す。
そんなこんなをして
朝の時間を過ごしていた…