可愛いなんて思ってない!
「へぇ…よく坂田と来るんだ、ここ?」
「そうそう。
あ、飲み物とかどうする?何頼む?」
と 案内された席に座って
メニューを広げる。
斎藤くんは少し悩んでから
アイスティーとサンドイッチにするわ、と言って 私にメニューを渡す。
私がすいませーん、と店員さんを呼んで
注文をした。
「本当、女子ってこういうとこよく知ってるよね。」
「んー、そうかな?」
「俺の前の彼女もそうだったし
妹もそんなんだから。」
と サラッと元カノの存在を私に告げる。
いや、まぁ最初から聞かなくてもいたことくらい分かってたんだけどね。
「斎藤くんって、高校入って誰かと付き合ってたの?」
私がストレートに聞くと
斎藤くんは少し笑って、まぁね、と言う。
(へぇ…高校入ってからいたんだぁ。)
全然聞いたことなかったや。
「それ、私知ってる人?」
「あぁ、いや…中学からの続きってやつ。1年の時に別れたけどね。」
あ、なるほど。
そういう感じか。
通りで噂の1つも聞いたことないはずだわ
と私は心の中で納得していた。
(そっかぁ…中学から続いてたんだぁ。)
すごいなぁ。
私なんて中学からずっと
付き合うどころか片思いなのに。
「小林は、ずっとハタ?」
「あ、ううん。中1で1人付き合ってたけど、別れちゃって。
秦山は中2から。」
私がそう言えば
斎藤くんが目を丸くしながら
すげぇ…と言った。
まぁそうだよね
もう片思い5年目だし…。
(そろそろ諦めるべきなんだけどさぁ。)
なーんか気持ちが…消えないんだよね。
「…すげぇ一途じゃん。いいと思うよ。」
「え……。」
私は斎藤くんを見て目をパチパチさせた。
長すぎて気持ち悪いとか
よく諦めないねとか
そんなこと言われるもんだと思ったのに…。
(…やっぱり斎藤くんって優しいなぁ。)
と 私はつくづく思う。
そんな彼に今どうして彼女がいないのか
不思議で仕方ない。
きっとモテないとかではなくて
自分から彼女作ってないだけだと思うけど。
「小林ってさぁ…。」
「ん?」
私がそんなことを考えていると
斎藤くんが私に話しかけてくる。
ん?何どうしたの?