可愛いなんて思ってない!
「小林って…可愛いよね。」
「……え…!?」
突然斎藤くんが
真面目な顔で私にそう言う。
え…?!
ちょ、斎藤くん何言って…?!
と私が慌てながら
斎藤くんに言えば
斎藤くんはクスッと笑って
「顔真っ赤。」
「っ…!」
「…そういうとことか、可愛い思うよ。」
と 今までに見たことないくらい
優しく微笑む。
-----ドキッ…
いつもと違う斎藤くんに
私は 調子を狂わされる。
(何で…そんなこと…。)
突然言ってきたのかわからなくて
私は顔を俯せたまま
冗談やめてよ…と呟いた。
しかし斎藤くんは
「冗談で言ってないよ。」
「っ…!」
なんて…
真剣に言ってくるものだから
私はまた顔に熱が集まるのを感じる。
私は何を言っていいのか分からず
視線を彷徨わせていれば
斎藤くんが 続けて静かに言う。
「…なのに、何で秦山かなぁ…。」
「……え…?」
外の景色を見るように
遠い目をしながら
斎藤くんが呟いたのを聞いて
私は思わず声が漏れた。
「こんなに思ってるのに
ハタは全然応えてやらねぇし…。」
「それは…私のこと何とも思ってないからだよ。」
「……そう思ってんだ?」
(………へ…。)
斎藤くんの言葉に
私は疑問を抱いた。
そう思ってんだ…って
どういう意味…?
「…ねぇ小林。」
「…何…?」
私が斎藤くんの顔を見て
静かに聞き返せば
斎藤くんも私のことを真っ直ぐ見つめ返して
静かに言った。
「…ハタなんかやめて、俺にしなよ。」
………え…?