可愛いなんて思ってない!





そして次の日


私を悩ませる事件が起こった。












「……は?」

「だからね、さっちゃん昨日斎藤くんと遊びに行ったでしょ?」

「…うん。」

「それを誰かに見られてたんだよ。」







登校して来た私をユカリが連れ去り
トイレへ駆け込む。

何事かと思って聞いてみれば、これ。






「だからって何でそんな…
私、ヒロキと付き合ってないよ!」







-----そう。


昨日の買い物の様子を
誰かに目撃されていたらしく

それで付き合ってると勘違いされたのか

学年中でそう噂らしい。





(どうしよう……。)






多分、いや絶対

この噂を 秦山も聞いているだろう。



私はそれを思った瞬間
背筋がスー…と冷たくなる感覚がした。



ただでさえ
秦山以外の男子と2人で遊びに行くことに罪悪を抱いていたにも関わらず

こんな噂が立ってしまったのだから。






「さっちゃん、落ち着いて。
誰に言われても動揺せずに否定すれば大丈夫だよ。」

「…うん。」

「何かあっても私もフォローするし。」

「…ありがとう、ユカリ。」






私の沈んだ顔を見て
ユカリが宥めるように私に言う。



全部 いけないのは自分。


昨日あんな軽い気持ちで出掛けてしまったから…
自業自得 そう思うしかなかった。





(…とりあえず教室に行こう。)





私はユカリと一緒にトイレから出て
教室へ向かう。


教室に着く間
確かに人の視線がこちらに向いていることに気付く。



…あれが斎藤の彼女なんだ


そんな声が小さく聞こえた気がした。






-------ガラガラ…






教室の扉を開ければ
バッとクラスメイトの視線が
私に集まる。




そしてその中にはもちろん…







「……っ…!」





(…秦、山。)






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