可愛いなんて思ってない!
秦山もこちらを見ていて。
目があったその顔は
驚いたように私を見ていた。
…違うよ、違うの。
誤解されたくない気持ちが込み上げてきて
出来ればここで全員に叫んでしまいたかったけど
私はその気持ちをグッと抑えて
みんなの視線を無視して
自分の席に着く。
もちろんユカリの後ろには
すでに斎藤くんが座っていた。
「…小林。」
ヒロキが席を立って
私の方へ来ようとしていた。
多分、この噂について話そうとしているんだと思う。
そして私の前に立ったヒロキが
私に向かって ごめん と言いかけた時---
------グイッ!
ヒロキの肩が後ろの誰かによって引っ張られて
私の前から退けられる。
そして私の前に立ったのは…
「……は、た山…。」
「小林。ちょっとこっち来ぃや。」
秦山は無表情で
冷たくそう告げると
私の腕を掴んで
無理矢理立たせ廊下へ連れ出す。
-----バク、バクッ
何を言われるのかと
私は少し怖くて 手を掴んで歩み進んで行く秦山に
声がかけられなかった。
…そしてそのまま
連れて来られた場所は 階段の裏。
人からはそう見つかることは少ない
隠れた場所。
そこに私を連れてきて
グイッと壁の方へ追い込まれる。
そして壁に追い込まれた私の前に
秦山が立った。
「……お前、どうなっとんねん。」
ゆっくりと開かれた秦山の口から出たのは この言葉だった。
「っ……あの、あれは「付き合っとんのか、斎藤と。」
私の言葉に覆いかぶせて
秦山が尋ねる。
その顔には---怒り。
私がこんな秦山を見るのは 初めてだった。
背筋がゾクっとする。
「…付き合ってないよ。」
私が質問に答えれば
秦山はさらに眉間を寄せる。
「…じゃあ何でこんな噂なってん。
お前ら2人で出かけたってホンマなんか。」
「……それは…、本当だよ。」
「っ…何やて…?」
明らかに
秦山の言葉に怒りが増して含まれていた。
私は顔を下に俯かせて
グッと力を手に込める。
-----どうしよう。
秦山を怒らせていることと
自分のしてしまったことへの反省で
私はものすごい不安に包まれた。