可愛いなんて思ってない!
-------そして
自分の部屋へ戻るように促されて
私は大人しくベッドへ入る。
秦山は体温計を私に渡して
キッチン借りるな、と言って部屋を出て行った。
……何かすごい…力が抜けて行く…。
(誰かがいるって…こんな安心するんだなぁ…。)
とベッドで熱を測りながら
ボーッとする頭で考えていた。
そして少し経ってから
秦山が自分で作ったらしい お粥と薬を持ってきて
私の部屋のテーブルにお盆ごと置く。
「ん、測れたか?
……って、38度もあるやないか!」
と 私から体温計を取り上げて
秦山が言う。
ったくお前は…と呟いてから
私の体を起こす。
「これ…食べれそうか?」
「ん……あんまり食欲…ない。」
「でも食べなあかんねんで。
猫舌か?それならフーフーしてやるけど。」
そう言って秦山が
お粥をすくい上げて フーフーと息を吹いて冷まさせる。
そして私に向けて
ほら口開けや、とスプーンを差し出してくる。
「っ…じ、自分で食べられるから…。」
「ええからほら、開きぃや。」
「っ………。」
秦山の善意とは分かっていながら
なんだかんだ恥ずかしい私は
熱のせいとは違う熱を
顔に集めながら
戸惑いつつも
口を小さく開いた。
「………ん。」
そしてお粥を口に含み
ゆっくりと喉へ流し込む。
-----そんなことを何回か続け
私がもういらない と言えば
秦山は仕方ないという様子で手を止めた。
「…じゃあほら、これ飲んで寝ぇや。」
そう言って私に薬と水を手渡し
私はそれを飲んだ。
「熱冷ましシート買ってきたさかい
これ付けて大人しくするんやで。」
そう言って 買ってきてくれた熱冷ましシートを
私の前髪を手で上げて おでこに貼る。
私はボーッとする体のせいで
抵抗することなく 秦山にさせるがまま
寝るように言われる。
「…ごめん、心配かけて…。」
「…ホンマやわ…
お前は本当、目が離せん。」
「っ……ごめんね。
来てくれて…ありがとう。」
私がそう言えば
秦山はなんだか
困ったように眉を寄せて 私の前に屈む。
(ん…?どうしたんだろう……?)