可愛いなんて思ってない!
「…お前は分かっとったんやなぁ。
俺が…あいつのこと好きやって。」
「……あぁ。」
廊下へ出ると
2人で並んでそんなことを話し始める。
俺が2年の時から
何で様子が変だったのかも
どうして小林を避けるように
他の女子と話してたのかも
俺からすれば全部無意識で
自分が何でそんな行動をしてたのか
後になってから知ったのに
こいつは全部 分かっとったらしい。
「…じゃあ一昨日
2人で出かけたのは、どういうつもりや。」
俺が静かに
前を見ながら 横に立つ斎藤に尋ねる。
俺に気持ちを気づかせるためか?
それとも
お前自身の気持ちのためか?
…何で、下の名前で呼ぶように言った?
それはお前の
どういう考えから来てるんや…?
俺が黙っていろんな考えを巡らせながら
斎藤の答えを待っていれば
斎藤が少し黙ってから
静かに俺に告げた。
「…最初は 人として好きだった。
面白いし、明るくてサバサバしてて。」
「………。」
「…小林がお前のこと好きなのも気づいてた。だけどお前は坂田に夢中で…そんな姿を見ながらも想ってる姿が、すごい健気でさ。」
遠くを見ながら
昔を思い出すように
斎藤が落ち着いて 答える。
「段々お前も気になり始めて
両思いになるのも時間の問題だなぁって
思ってた。
…でもお前は そんな自分の気持ちから逃げてた。」
(………。)
確かに 斎藤の言うとおりだった。
自分の気持ちを誤魔化すために
サナとエリカと仲良くして
小林への気持ちも同じだって
言い聞かせるように
笑っていたつもりだった。
「…そんな姿を見てる小林が
どうしようもなく可哀想だった。
…同情だと思った、俺のこの気持ちは。」
でも…
続けてそう 斎藤が呟く。
「でも違った。
いつの間にか俺は思ってたんだ。
…秦山じゃなくて、俺にすればいいのにって。」
「……!」
俺はそう言った斎藤の横顔は
今まで見たことがないくらい
真剣だった-------