可愛いなんて思ってない!
-----------これは…夢?
この一瞬の出来事に
私は目を見開いたまま、固まっていた。
「何もせぇへん約束やったけど…
我慢できんかった。すまん。」
そう謝る秦山の顔が
照れながらも真剣で
少しだけ細められた目にはまだ
熱がこもっていて…
(…う、そ……。)
それを認識して やっと
今の状況を把握する。
---待ちに待っていた この時。
来ることはきっとないって
どこか諦めながらも
もしかしたら、なんて
小さな期待も持っていた
それが
たった今 叶おうとしてる。
「…返事、聞かしてほしい。」
「……っ、あ……。」
そっ、と
揺れる視界の中の秦山が
私の手に優しく自分の手を重ねて
ギュッと
優しく強く握って---
「っ……は、い…!」
そう言った時に
目に溜まっていた大粒の涙が落ちて
それをもう片方の手の 親指の腹で
私の涙を拭う秦山が
「…好きや、紗香。」
優しく…そう微笑んで
また私に キスをした。
手はずっと、重ねられたまま---
「私も、祥一が好き…!」