君のいる世界
現在


 その日、いつものように撮影スタジオに向かった。


 貸しスタジオの重いドアをこじ開けてなかに入ると女の子が2人ハンガーに掛かった洋服を前にスタイリストさん、見知らぬ男性、とその秘書みたいな女性、それからウチの社長がいた。


 あ、今日は女の子が3人なんだ珍しい。



 普段雑誌のモデルは女の子2人が定番だけど、たまの特集記事には3人になることもあるので、あまり気にしなかった。

 その一団はかわいい洋服を前に盛り上がっていたので、あたしに気づいたのはあたしが挨拶をしたからだった。


「おはようございます~」

「……おはよう玲奈」

 歯切れが悪く社長が挨拶を返してくれるものの、モデルの2人は顔を見合わせてくすくす笑っている。

 なんで笑われているのかわからなくて、居心地がわるい。1人のモデルの利瀬ちゃんとは、もう2年一緒に仕事をしているのに、なんで何も言ってくれないんだろう。

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