君のいる世界


 橘マネージャーに追いついたのは、食堂から宿の階段へと向かう所だった。


「なんで、あんなこと言うんですかっ!! 」


 ゆっくり振り返った橘マネは、驚いた様子もなくこちらを見下ろす。 


「撮影は明日も残っている。使えない写真を撮られても困るし、それを拡散されても困るので釘を刺しておいただけだ」


「礼治さんは、そんなことしないもの!! 」

「そんなことなんで解る。いくら憧れていたとしても、そんなことは解る訳ないだろう」

「違う、違うもの。あたしが見てきた礼治さんの写真はそんなものなんてなかった! 」

 
 あたしが、好きで好きでたまらない写真を撮ることができる礼治さんが、変な写真なんて撮るわけがない。

 グラビアなんだから、あたしがもっと色気をださなくちゃいけないけど、それはそういう写真を撮らなくちゃいけないんだもの。

 だから、礼治さんが悪いことなんてない……

 なんで上手くいかないんだろ。
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