君のいる世界
胸の前でぎゅっと手を握りしめて、はぁぁっと深呼吸する。トクトク打ち鳴らされる心臓はそのままだったけれど、小刻みに震えていた手がぴたりと止まる。
ほっと息をついて礼治さんを見つめて、口をひらく。
「あたし、礼治さんだけ見ます」
「うん。いい子だ」
笑顔を作った礼治さんが、タバコを口にくわえる。
礼治さんも真剣だ。今までの撮影でタバコなんて吸わなかったのに、今日は吸ってる。きっと物凄いプレッシャーが礼治さんに掛かっているんだ……
あたしも、しっかりしなくちゃ。
「撮影しよ。綺麗に撮ってあげるよ」