君のいる世界


「あたし、二重跳びも出来るんです! 」

 小学生の頃、なわとびはよくしていた。冬になると、なわとびカードがやって来て、なわとびの技によって等級をもらえるというシステムだった。

 普通の跳び方から、交差跳び、二重跳び、二重跳びに交差飛びを混ぜた『はやぶさ』など種類もたくさんあって、毎日頑張って跳んでいた。

 掛け声をかけて跳びはじめたものの、数回で絡まる。


「おかしいなぁ…」


 小学生の頃より、体が重くなったのは仕方ないとしても、一番の邪魔物は胸の脂肪だ。縄を跳ぶためにジャンプすると、ふるふる揺れて安定してくれない。

 胸のせいで跳べないなんて言いたくないから、もう一度跳ぶと、今度はさっきより長く跳ぶことが出来て、嬉しくて笑ってしまう。


「礼治さん、見てくれましたかぁ」


 たばこを口にくわえたまま、礼治さんが笑うのがわかった。


「いいね。その調子」

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