君のいる世界
もしここで話せなかったら、きっと後悔する。だから橘マネが呼ぶのを振り切って、礼治さんに近づく。
「お疲れさま」
礼治さんの、やわらかい声がわずかに上がった口からこぼれる。ちょっと笑ってくれてる。それに勇気づけられて口を開く。
胸の前で手を組んで、泣きそうになりながらでもかまわない。
「……礼治さん……あたしを撮ってくれて……ありがとう」
手を伸ばそうとして止めた礼治さんも、切ない顔をして玲奈ちゃんを見つめる。
「玲奈ちゃんは、とてもいい被写体だったよ」
「……ほんと?」
頷いて礼治さんも答える。
「ほんと」
礼治さんは、どこまでも優しい笑みを浮かべる。