君のいる世界

 仕上がった花束を確認して添えてもらうカードを記入して渡す。そういえば、と思い出して来月の分の花束も注文しておくことにした。


「来月は来れないので、お任せで送ってもらえますか? 」

「初めてじゃないですか、そんなこと」

「抜けられない仕事を組んでしまったのでね。彼女の好みは把握してもらっているので、大丈夫ですよ」

「それなら後で贈った花をメールします」


 彼女が口にしたのは仕事で使っているパソコンのほうだったが、別に不都合はない。それで了解して、来月の分のカードも記入して渡す。

 少し考えてしまったが、普段と変わりないメッセージになった。きっとそのほうがいい。自分の些細な出来事なんて、すぐに日常に紛れてしまうのだから、彼女が知ることも無いだろう。

 花屋を後にして、悪友との待ち合わせに急ぐ。あいつは熊みたいな形をして、そのくせ酷く繊細な奴だ。勘のいいそいつをごまかしきれることはない。

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