君のいる世界
あれこれ注文して、酒も選んで、届く物を平らげる熊を横目に酒をあおる。強い酒が喉を焼いていく。あまり食べずに飲んでいるのを気にした熊が、刺身の皿を滑らせてきた。
「お前が強いのは知ってるけど、少しは食えよ」
「んーーよく飲み込めないんだ」
がたんとテーブルを鳴らして箸を置くと、とたんに渋い顔になる。
「……ふざけてんのか? お前、医者には行ったのか? 」
「おー行った、行った。そんでお前に身元保証人になってほしいんだわ」
A4の封筒からばさばさと書類を取り出す。自分の分の記名は済んでいて、あとは保証人の欄が空いているその書類を見て、さらに熊が顔をしかめる。
「ふざけやがって。『何が高い壺買わされて困ってる、お前も買ってくんない? 』だよ。このための印鑑なんだな」
「うん。まあね、あそこで手術の保証人になってなんて言ったら、お前仕事になんないだろ? 」
「馬鹿野郎。壺だって仕事出来なくなるには十分だよ」
こいつは見かけによらず、優しい。