君のいる世界
「馬鹿にするなよ、そんなヤワじゃない」
「まあね、彼女出来たばっかじゃね~」
ふっと真顔になって熊が見るので、ごまかして酒をあおった。
「お前、言ったのか」
「誰に? 嫁さん? 」
「居るだろ、イロイロ仕事関係だの、嫁さんとか」
「仕事のほうは、長期休暇ってことで話つけた。あいつには……言ってない」
「言わないで済むことじゃないだろう? 」
「言わないで済むならそれでいい。で、無理ならお前が遺書を届けてよ」
だん、と怒った熊がテーブルを叩く。
「最後は人任せかよ!」
「…………俺のこと見ると、倒れるんだよ。それだけでも辛いのに、そのまま付いてることも出来ない……」
「ちゃんと話せよ」
「間に人を介すのは、ちゃんとじゃない」
そうしなければ、話せないから。想いや気持ちを伝えるのに、人づてだなんて無いだろう。