君のいる世界
とん、と揃えて渡された書類を確認しながら熊を見ると、明らかに憔悴していた。体に合わず繊細な神経は随分こき使われてる。
「結輝の事はどうするんだ? 」
「知り合いに頼んでそっちで使ってもらうことにした。本人が続けたいなら、そっちの撮影も続けたっていい」
「言ったのか? 」
「まさか。何のメリットもない。結輝だって俺の気まぐれだって思ってる」
そのほうがいいかもしれない。新しい現場で忙しくしているうちに、記憶からいなくなれればいい。
「………居なくなることばっかり考えるなよ。僕も結輝もそれを望んでいる訳じゃない」
「……覚えておくよ」
居なくなる
それは約束されていることで、いつかは来ることなのに、自分でもまだ実感が湧かない。それでもなんとか頑張って終わりじまいのために奔走しているのだ。
「なあ、必ずしも居なくなる訳じゃないんだろう? 手術して、安静にしてたら……」