君のいる世界

「ほんとバカとかヒドイ」

「バカよ、本当。ずっと私の後ろをついて回って、いつも相談してたのに、いきなりモデルになるとか、ほんと後先考えてないバカだよ……それに私はそのバカが羨ましかったから、ずっと玲奈のこと許せなかったっ……」


 今にも泣き出しそうな顔のおねーちゃんからそう言われて、びっくりする。

 おねーちゃんが、あたしを羨ましい?

 あんなに何でも出来て美人のおねーちゃんに、そんなふうに思ってもらえるところなんてないよ。


「玲奈はバカかもしれないけど、何年かかっても決めたことをやり遂げたじゃない。それ凄いよ。山崎礼治に会う、写真を撮ってもらう。私なんてみんな中途半端で、玲奈みたいにバカになりきれなかった……きっと変なプライドがあったんだね」


 きゅっと強い目で、おねーちゃんが見つめてくれる。


「行きなよ、山崎礼治さんのとこに。そのためにずっと生きてきたんだから」

「おねーちゃん……あたし、行ってくるね! 」


 玄関でパンプスを出していると、リビングに置いてあったバックを持ってきてくれる。
< 136 / 181 >

この作品をシェア

pagetop