君のいる世界
「急ごう、玲奈ちゃん」
「はいっ」
あたしとおねーちゃんの話の間に、タクシーを呼んでいてくれた結輝さんが、早く乗るようにせかしてくる。
そのタクシーの向かい側に、大きめのワゴン車が止まった。ドアを開けて出てきたのは、橘マネージャーで一瞬、体が固くなる。あたしと結輝さんとタクシーを見て顔をしかめる。
「玲奈、これはどういう事ですか? 」
「……ごめんなさい……今日は仕事出来ません………もし今日行かなかったら、あたし一生後悔します」
言い逃げでタクシーに乗り込んで発車してもらう。すぐにスマホが鳴り出すのを電源を止めてやり過ごす。ほうっと溜め息をついてスマホをバックにしまうと、結輝さんと目があった。
「ごめんね、よかったのかな? 」
「いいんです。もし今の事務所がダメになったら、別の所を探します。それにもうグラビアでなくてもいいんです、あたし」
もう礼治さんに会えたのだから、モデルであったり、グラビアモデルでいる必要もない。ただまだグラビアをすれば、礼治さんにまた会える可能性があっただけ。