君のいる世界
「……この度は、誠に残念なことになってしまいまして申し訳ありません。……何分、時間が早いものですから人数も少なくてすみません」
謝って済むわけないじゃん!
だからって、胸倉を掴んで怒りたいとも少し違う。それでも目の前が真っ赤に染まって、かあっと頭に血が昇って熱くなるのがわかった。
手術を辞めて抗癌剤治療にするのか、またはホスピスにするのか他にも選択肢はあったはずだった。でもおじいちゃんは歳の割に若くて元気だったから手術することにしたんだ。
ただ糖尿病だったということは、とてもリスクが高くなる。
感染症へのリスクはどんな病気でもある。ただ糖尿病患者ならそのリスクは三倍にも跳ね上がる。
おじいちゃんは感染症から敗血症をおこしてしまった。どんなにシリンジポンプから抗生物質を流してもその菌は死んでくれることはなかった。
常に叩かれる病院の菌は耐性が出来てしまい、感染力も強く死滅させることは難しい。
おじいちゃんの死因は敗血症による「多臓器不全」だ。ガンは原因になることはあっても、死因になることはない。