君のいる世界

 おじいちゃんが、いなくなったのをどこかで悲しんでくれる人がいることで、悲しいのは自分だけじゃないってわかる。

 誰かと悲しみを分け合える。


 ずるいかもしれないし、汚いかもしれない。


 それでもここで、ひっそりと送り出されるおじいちゃんを悼んで悲しんでくれていることで、救われている。


「皆さんが、悲しんでくれて、泣いてくれて……おじいちゃんがここで、きちんと生きていたってわかります……お世話になりました」


 頭を下げると、お医者さまも看護士さんも深々と頭を下げてくれた。

 長く長く頭を下げてからお医者さまはお線香を手向けてくれて、霊安室を後にした。



 泣きすぎて、ぼうつとする頭でずり落ちそうな格好で椅子に座っていた。そんなだらしない格好でも誰も文句を言う人はいなくて、みんなが黙ったままだった。

 葬儀屋さんの車が来て、はじめてみんなが声を出した。

 喉の奥に塊を飲み込んだように、かすれた小さな声でお互いに声を掛けて、お互いでお互いを支えるように立ち上がって、あたし達は霊安室から外に出た。
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