君のいる世界
葬儀屋さんの車に乗せられたおじいちゃんが、ゆっくりと目の前の坂を登っていく。見上げたそこは地上で、ここは地下だった。
ここは黄泉の国で、この坂はヨモツヒラサカなんだ。おじいちゃんの魂を取り戻すことが出来なかったあたし達は、これから人の生きている世界にかえらなければ。
ゆっくりゆっくり動いていた車が坂を登りきってカーブを曲がっていく。そのテールランプを見送ってから、みんなで坂を登っていく。
「………行こう、玲奈」
「うん」
おかーさんに背中を押されるまで、あたしはただ上に広がる青い空を見ていた。おじいちゃんがここにいなくても、世界は何も変わらないそのことが不思議で悔しかった。
噛み締めた口からまた嗚咽が漏れそうだった。下を向くとまた涙がこぼれるので、坂の上を睨んで登っていく。
「玲奈、我慢すると血管が切れるからやめなさい」
とんとんと背中を叩かれて、ふぐっとくぐもった声が漏れた。