君のいる世界
現在 玲奈
タクシーを降りると、結輝さんが先導してくれて病室まで急ぐ。あたしのことを気にしながらも、結輝さんも早足だ。
飛び込むように病室に入ると、びっくりした顔の礼治さんがこちらを見た。
「なにやってんの、結輝」
「礼治さん、俺っ知らなくて……」
「あーハイハイ。あの熊公だろ? あいつね、獣だから人の言ってること解んないのよ。俺はね、手術前のナイーブな時に乗り込んで来られても困るのよ」
「だって俺、礼治さんのアシスタントですよ? 礼治さんの手足となって働いてきたのに、どうしてこんな大事なこと教えてくれないんですか?」
「だってさ、お見舞いなら美人がいいよね。結輝呼んだら、俺がモテなくなる」
そう言って笑う礼治さんは、何も変わっていないようで……でも少し、痩せてる。
「またそんな事言って……俺がどれだけ心配したのか……毎日、お見舞いに来ますから覚悟してください」
「いいよ、ウザイから。変な噂がたったら困るし」