君のいる世界

 にっこりと笑っているものの、瞳は鋭く結輝さんを射抜いている。


「奥さんが、病気だって言いました。別居してるから、俺だって一回も会ってないですよね? そんな奥さんよりも、俺や玲奈ちゃんを頼って欲しいんです」


 どんと胸を叩くパフォーマンスは逞しい。ただ礼治さんには響いていないみたいだけれど。


「だからね、完全看護だから俺のことは気にしないでいいから。自分のことをしっかりやって」


 そこまで言われて、顔も見たからか結輝さんも幾分落ち着いてきた。かえってあたしのほうが言いたいことが溢れてきて、口をついて出てきてしまう。


「それでも、あたしは礼治さんの顔が見たいです。あたしが出来ることなんて、たいしてないだろうけどそれでも、そばにいたら何か出来ます! 」

「うん。ありがとうね。でも俺は弱ったり、苦しんでたりしてるとこ、あんま見せたくないんだよね」

 ぽそりとみっともないよね、とつぶやく。

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