君のいる世界

「みっともないとか、言わないでくださいっ!!」


 ぶわっと涙が溢れるのがわかった。悔しくてきつく瞼を閉じてやり過ごす。泣いたりしたら、なにも言えない。手術の前から泣き叫ぶ女になんてなりたくない。


「礼治さんは、いつだって優しくて格好いいんです。今だって結輝さんのこと心配して、帰れって説得してて……だから、みっともないとか、そんなことないです……」

「だからって玲奈ちゃんが、それを抱え込むことなんてないんだよ。関係ないってスルーしていいんだよ」


 ふいに頭を撫でられて、ふわりと抱き寄せられる。泣きそうな子供をなだめるような、そんなことをしてくれるのは、礼治さんだ。告白して泣いた時と同じ、礼治さんの匂いがする。


「いいんだよ。玲奈ちゃんはまだまだ若くて、これからもっといい男にだって出会えるんだから、こんなとこですぐに死んでしまう男のことなんて、早く忘れて」

「……いや、……絶対、いや……」
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