君のいる世界
「礼治さん、好きです」
「うん。知ってる」
応えてくれなくても、気持ちを受け止めてくれる。くしゃりと髪を混ぜた手は、大きくて温かい。
「俺がこれから受ける手術は、5時間くらいかかるんだよ。だから、玲奈ちゃんも早くお帰り」
「……います。礼治さんが手術が終わって、目を覚ますまで、ずっといます! 」
「………無理しなくていいからね」
「いたいんです、そばに……いさせて下さい」
ふいに手のひらが離れるのを、部屋に看護士さんが呼びにきたことだとわかる。礼治さんは看護士さんに連れられて行き、結輝さんは撮影現場に行き、あたしは手術のための、待合室に案内してもらった。
白い壁の窓もない殺風景なその部屋は、長椅子とテーブルがあるだけだった。わずかにカレンダーと、壁の内線だけが人の利用する場所だとわかる。
大きな大学病院なので、ストレッチャーに乗せられた人がエレベーターで運ばれてきて、自動ドアをくぐっていく。
手術室には幾つかの部屋があって、同時にいくつもの手術が出来るようだった。