君のいる世界
だから、その人が前に座っても、幾つかある手術室のうちのひとつで手術が行われている人の身内だろうとしかおもわなかった。
「あなたお幾つ? 」
「18になりました」
「そう。とっても若いのね」
刺のあるその言葉に打たれて、改めてその人を良く見た。
あたしは、この人を知っている……それは憧れでしかなかった世界に棲んでいる、世界でたったひとりの礼治さんの大切な人だった。
写真集に切り取られていた時は二十代前半で
、とても美しかった。どこもかしこも白く美しい肌に、意思の強い黒い瞳と、形のいい頭を強調するようなショートカットの黒髪が、まるで妖精のようだった。
こんなに綺麗な人がいるんだ。
それは今から思えば撮る側の礼治さんの思いが反映されたものであったのだろうけれど、当時のあたしにはわからなかった。
10年たった今も美しいその人は、不快な気持ちを隠すことなくぶつけてきた。